社長と喧嘩して芸能事務所をやめたあと、日銭稼ぎで派遣販売員として店頭に立っていた時期がある。
ある日は商店街の中、ある日はショッピングモール、ある日は家電量販店。
年齢、性別、職業、地域柄……様々なタイプのお客様と「店員として」接する中で、沢山の学びがあった。
ちょっと思い出しながら書いてみる。
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十人十色とはよく言ったもので、毎日いろんな「ジャンル」のお客様がいらっしゃる。
学生、主婦、会社員、フリーター、無職、経営者、会社役員……。
どんな肩書きでも、誰もが別の顔を持っていた。
親子、恋人、夫婦、愛人……。
誰かとの関係性でカテゴライズされた顔。
ニーズを知るためにヒアリングすればするほど、お客様の考えと、その傾向が見えてくる。
ぱっと見ではわからない、本心も。
ショップ店員という程よく他人な立場だからか、「ここだけの話」もしてくださる。
クレーム対応をよく任されたので、怒りの感情の奥にあるお気持ちもじっくり聞かせていただいた。
そうしているうちに、人が怒るのは「自分を雑に扱われた」と感じたときではないかと気づいた。
そして「自分を雑に扱われた」と判断する基準は、ある条件で異なることがわかった。
「精神的に自立している人」か「他人に依存している人」かだ。
精神的に自立している人は、滅多なことでは怒らない。
スタッフのミスに対して「自分もやらかした時がある」なんて言って、ご自身の失敗をネタに応援までしてくれる。
依存している人は、人格を攻撃しがちだ。
スタッフのミスをご指摘いただいていたはずが、「育ちが悪い」「頭がおかしい」「騙そうとしてる」と話が飛躍する。
この差は、職業などの肩書きではなく、いかに普段から「自分を大切にできているか」に影響されている。
元・依存体質だった私も、昔は「自分を大切にして」とよく言われていた。
けれど、当時はさっぱり意味がわからず、「大切にしてるからこうなってるんだ」などと答えていた。
でも、そうじゃなかった。
「自分が大切だから周りに求める」という考えは、大きな間違いだった。
自分を幸せにするのは「誰か」ではない。
自分を幸せにできるのは「自分だけ」だ。
「幸せ」の鍵を誰かに渡してはいけない。
自分でしっかり握っていなくちゃ。
自分で自分を幸せにしているのが「精神的に自立している人」で、誰かに幸せにしてもらおうと求めているのが「依存している人」だ。
様々なお客様の対応をさせてもらえたおかげで、大切なことに気づくことができた。
若い頃に、派遣販売員の経験ができて本当に良かった。
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それ以来、自分を幸せにする練習をするようになり、ついに、自然に「幸せになる選択」ができるようになった。
今、ひとり優雅にオムライスを食べている。
最高に幸せだ。