「えー!いいじゃん!このくらいタダでやってよ」
「君ならサクッとできるでしょ?」
「今回はギャラないけど、君のタメになると思うんだよね」
確かにサクッとできる。
良い経験になる可能性もある。
しかし、言われた側のクリエイターは、やりたいと思えるだろうか。
誰かに決められるのではなく、クリエイター本人が「報酬いらないからやらせてほしい」と思ったことならいい。
むしろ、「絶対にこの案件やりたい!」と感じたときの方が、出来上がる物のクオリティは、確実に高い。
今回は、予算のない依頼主が、クリエイターに安く仕事を頼む際に、気を付けるべき重要なポイントを解説する。
絶対に言ってはならない言葉
「このくらいタダでやってよ」
「何を言ってるのか自分で解っていない」と推測されるセリフだ。
「このくらい」とは、どのような意味なのだろう。
「クリエイターがこれまで時間を投じて得た経験を、『このくらい』って言っている」という意味だ。
「お前のこれまでの経験なんて、『このくらい』だ、『タダ』=無価値だ」と。
「いいじゃん!このくらいタダでやってよ」って言葉は、もはや人格否定なのだ。
「君ならサクッとできるでしょ?」
確かにできる。
しかし、このセリフを言われたクリエイターが、「やりたい」と思うかどうかはまた別の話だ。
このようなセリフを何の疑問もなく言える人は、自分でやってみればいい。
必要な環境を、自分のお金出して一式揃えて、何時間もかけて勉強しながら、あらゆるパターンの現場経験を積み上げて、自分でやればいい。
やってみたところで、できないから。
「今回はギャラないけど、君のタメになると思うんだよね」
これは、最も悪質なパターンだ。
ぼんやりとした利益をチラつかせて、クリエイターを釣る手法。
確かに何かしらの経験は積めるかもしれない。
けど、もしタメにならなかったとしたら詐欺だ。
「おまえのために言ってるんだぞ」というセリフは大概が嘘。
大体の場合が、自分のために言っている。
そもそも、メリットを明確にできない時点で怪しい。
「保証はないけれど、いい事が起こるかもしれないから、10万円ちょうだい」と提案してるのと同じだ。
クリエイターからすると、信用するに値する点が、一切見当たらない。
値切りの礼儀
ごく稀に、クリエイターは依頼主の予算に合わせて仕事を受けてくれることもある。
その場合、特別な場合を除いて「かける時間」や「必要な材料」を調整して、予算に合わせたクオリティにする。
しかし、信頼関係を築かずに、いきなり値切る人間は、高いクオリティを保ったまま、報酬だけを下げようとすることが多い。
「店員さん、この100万円のダイヤちょうだい!お金ないから100円で!」と提案する人間がいるだろうか?
「100円ショップのオモチャなら可能かもしれませんね……10円足りていないですが」という話だ。
価値があるか
クリエイターは、なんでもかんでも、お金をとろうとしているわけではない。
実際に、クリエイターが無料で提供しているサービスも沢山ある。
むしろ、投資してでも、「やりたい」と思う仕事はある。
しかし、その場合、
①依頼主との信頼関係
②お金よりも価値のある明確な報酬
のどちらかをクリアしている事がほとんどだ。
まず、依頼主とクリエイターが、お互いにリスペクトしあっていないと成り立たない。
どちらかがどちらかを見下しているアンバランスな関係だと、ロクな結果にならないことがほとんどだ。
日ごろからお世話になっている人のためなら、恩返しとして、無料または安価で依頼を受けることもあるだろう。
また、投資の意味で依頼を受けることもある。
金額よりも価値のある「明確な」報酬がある場合、依頼を受ける可能性は高まる。
- クリエイターの知名度が上がる
- 社会のためになる
- 困っている誰かの助けになる
などは、お金よりも価値があることだ。
安くクリエイターを使いたい人は、まず、自分が抱えているプロジェクトの社会的価値を高めることが先だ。
「私にやらせてください!」と思ってもらえる提案ができるだろうか。
まとめる
「優しさ」や「愛情」と同じで、タダ働きは、他人に強要するものではない。
なぜ、強要するケースがあるのかと言うと、クリエイターを、ひとりの人間としてリスペクトしていないからだ。
恋愛に例えるとわかりやすい。
これまで一切関わったことのない、知らない人間から
- 「俺に尽くせ」
- 「私のこと愛してよ」
と言われたらどうだろう?
「えー!いいじゃん!このくらいタダでやってよ」
「君ならサクッとできるでしょ?」
「今回はギャラないけど、君のタメになると思うんだよね」
このようなセリフは、同じくらい気持ち悪い。
「自分のことしか考えてないな」と捉えられて、心のシャッターを閉められるのが関の山だ。
この記事を読んだ人は、一緒に気をつけていこう。